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中小企業と事業承継・中小企業とABL
近年は、少子化の影響からか、親族内に適当な後継者が見当たらない事例が多くなってきています。そのため、他の企業に承継させる方法がとられる例も増えつつあります。M&Aの手段としては、①株式の譲渡のほか②事業譲渡や③合併等の方法があります。①株式の譲渡による事業の承継は、売り手側の会社が自己の発行済株式を買い手側に売却して経営権を引き渡すものです。売却の対価は、株式を有している売り手側の経営者個人が得ることになります。株式譲渡は、売り手側の株主が代わるだけであり、会社はそのまま存続します。②事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を、承継先に売却する方法です。この場合、売却の対価は、経営者個人ではなく、譲渡をする会社が受け取ることになります。会社自体は事業を譲渡した後も存続しますので、譲渡をする会社自体を消滅させるためには、別途、清算等の手続を取らなくてはなりません。③合併とは、契約によって、2つ以上の会社を1つの会社にすることをいいます。 売り手と買い手が同一法人となるので、統合の効果は早く表れてきます。株式譲渡や合併の手法は、会社の有形・無形すべての資産をそっくりそのまま譲り受けることになるので、売り手の潜在債務・簿外債務などを引き継いでしますリスクがあります。 事業譲渡の場合には、資産を個別に譲渡の対象にするため、債務を自動的に引き継ぐことはありません。他方で、事業上の許認可を引き継ぐことができません。合併においては、2つの会社がいきなり同一法人となるので、お互いの会社風土、文化を慎重に考慮しておく必要があります。 平成21年には、中小企業の事業再生の円滑化を目的として「第二会社方式」による再生計画の認定制度が創設され、この認定を受けると、営業上必要な許認可等を承継できる特例、税負担の軽減措置、金融支援を活用し、事業再生に取り組むことができます。
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中小企業とABL
昔から(ことにバブル以前まで)我が国では、企業が金融機関から融資を受ける場合の保全策は不動産担保と代表者等による保証であった。しかしながら、バブル崩壊により不動産の価格が大幅に下落し、企業は、必要とする資金の調達が困難になったり、担保不足により既に融資されている資金を引揚げられたり、という状況が散見され、企業の資金調達に支障をきたすようになった。 所有と経営が明確に分離されていない我が国の中小企業においては、企業が融資を受けるに際し、代表者を会社の借入の連帯保証人とする、いわゆる個人保証により信用補完がなされてきた。このような代表者による個人保証は、当該企業が倒産した時に連鎖的に個人破産を招き、さらに破産者は復権しない限り取締役に就任できなかったことから経営に参加することが許されないことになり、貴重な人的経営資源が失われてきた。そのような背景の下に、不動産担保や個人保証に過度に依存しない融資制度として企業が保有する売掛金や在庫動産といった企業収益を生み出すとされる、いわゆる事業収益資産を活用した融資制度であるABLが次第に脚光を浴びることとなった。 ABLの借手側企業のメリットは、①資金調達手段の多様化②安定的な運転資金の確保③資金調達枠の拡大④貸手企業とのリレーション強化であり、貸手企業におけるメリットは、①融資手法の多様化②経営支援の強化③貸倒れリスクの分散・軽減があげられる。 中小企業の資金調達は、金融機関からの融資に頼らざるを得ないという現実がある。そこでABLを利用した融資は、中小企業、不動産を所有していない企業、流動資産の比率が高い企業等の資金調達に寄与するところは小さくないといえる。 また、金融機関が顧客との間で親密な関係を築くことで、顧客情報を蓄積し、この情報をもとに貸出等の金融サービスの提供を行うビジネスモデルである、リレーションシップ・バンキングを構築することができるのである。
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